特別養護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービスなどの介護現場では、介護者と要介護者の感染予防や安全のために使い捨て手袋の使用は欠かせません。
排泄・入浴・食事の介助や口腔ケア、 オムツ交換など、介護が必要なシーンは数多くあり、要介護者と介護者が直接触れる場面では感染症の媒介者とならないよう適切な手袋を選び、正しい方法で使用する必要があるでしょう。
本記事では、介護の現場でよく利用されるニトリル手袋の特徴や選ぶ際のポイントを詳しく紹介します。また、ニトリル手袋の正しい使い方についても解説しているので参考にしてください。

著者紹介
歯科医院・病院用衛生用品を1つから購入できる通販サイト「HAPPY HANDS(ハッピーハンズ)」です。歯科医院などで使用される使い捨て手袋やマスク、その他の衛生用品をさまざま販売しています。
今回は、介護現場で活躍するニトリル手袋の特徴や選ぶポイント、正しい使い方について解説します。
介護現場で使用される手袋の種類

介護現場で使われる使い捨て手袋には、次のような種類があります。
- ポリ塩化ビニル手袋
- プラスチック手袋
- ラテックス手袋
- ニトリル手袋
安価な手袋を選ぶ方もいらっしゃるかもしれないですが、それぞれ、素材や特徴が異なるため、使用目的に合わせて選ぶのがおすすめです。
ポリ塩化ビニル手袋
ポリ塩化ビニル手袋は、ビニール手袋やPVC手袋と呼ばれることもある使い捨て手袋です。劣化しにくく、油や薬品にも耐性がある点が特徴です。
薄い素材のものが多いため、手袋をしていても手や指先の感覚が残り、細かい作業にも適しています。劣化しにくいというメリットがありますが、破損には弱いため、厳重な感染対策を取りたい場合などには適していません。
また、ポリ塩化ビニルは、食品衛生法に適合しているものと適合していないものがあります。ちなみに、フタル酸を含んでいるポリ塩化ビニル手袋は食品を扱う際には使えません。一般的な衛生管理や軽作業などに適している手袋と覚えておきましょう。
プラスチック手袋
プラスチック手袋には、ポリエチレン、TPEやEVA(エチレン-酢酸共重合樹脂)などの種類があります。細かく紹介していきます。
ポリエチレン手袋
プラスチックの一種、ポリエチレンを原料としたポリエチレン手袋は、指先に密着するタイプではありませんが、油や薬品、洗剤に対しての耐性があり着脱が簡単な点がメリットです。また、穴あきや破れには弱いというデメリットがありますが、調理や配膳、盛り付けなどの食品関係の作業でよく使われています。
ポリエチレン手袋は種類が多く、指先を絞って抜けにくくしてあるものや、手袋の表面に細かい凹凸を施して食材を付着しにくくしたエンボスタイプなどさまざまなものがあります。
TPE
TPEを原料にしたTPE手袋とは、熱可塑性(ねつかそせい)エラストマーのことです。
ポリ塩化ビニル手袋とポリエチレン手袋の特徴のちょうど中間のような特徴を持つタイプの手袋で、ポリ塩化ビニル手袋のような密着感はないものの、ポリエチレン手袋よりも伸縮性があるため、細かい作業に使われることも多くあります。
EVA(エチレン-酢酸共重合樹脂)
EVA(エチレン-酢酸共重合樹脂)手袋は、可塑剤を使用していない手袋のため、安全性が高い点が特徴です。手指への密着度が高いうえに、温度の高低差や紫外線、水分などへの耐性もあります。
また、無毒性のEVA手袋は、介護現場や医療現場、食品の製造や加工にも適しています。ほかにも美容業界や清掃作業など幅広い分野で使われている手袋です。
ただし、EVA(エチレン-酢酸共重合樹脂)手袋は極端な温度変化に弱い点がデメリットです。温度差が激しいと手袋が変形することもあります。また、素材の独特の匂いが気になる方もいるかもしれません。
ラテックス手袋
ラテックス手袋は、天然ゴムのラテックスを原料とした使い捨て手袋です。丈夫で伸縮性に優れているため、長時間の作業に適しています。油や薬品に対する耐性はそれほど高くありませんが、手指に密着するため、細かい作業をする際にもよく使われます。
ラテックス手袋には2種類の加工法があり、1つは手袋を塩素液に浸して塩素処理して作られたもの、もう1つは手袋の内側をポリマー溶液に浸してポリマーの層を作ったポリマーコーティング処理して作られたものがあります。
塩素処理したラテックス手袋は、乾いた感触で着脱がスムーズで、ポリマーコーティング処理したラテックス手袋は、しっとりしたテクスチャーが特徴です。
ラテックス手袋は介護現場でもよく使われますが、ラテックスアレルギーのリスクがある点がデメリットです。ラテックスアレルギーは、ラテックス手袋の原料である天然ゴムに含まれるラテックスタンパク質への反応で起こります。
ラテックスアレルギーになると、皮膚のかゆみや炎症、蕁麻疹などの症状が現れます。さらに、重症化した場合は、呼吸困難や意識障害、アナフィラキシーショックを引き起こすこともあるため注意が必要です。
ニトリル手袋
ニトリル手袋もゴムを原料として作れられていますが、ラテックス手袋とは異なり石油系の合成ゴムまたは人工ゴムのニトリルゴムを用いています。ニトリル手袋は国内での生産はほとんどなく、主に東南アジアや中国などで製造された商品を輸入・販売しています。
ニトリル手袋の特徴は、強度が高く伸縮性があり、薬剤や油脂への耐性がある点です。また、天然ゴムではなく合成ゴムや人工ゴムを原料としているため、ラテックスアレルギーの心配がありません。ニトリル手袋には、パウダーありとパウダーなしの2つの種類があります。
パウダーありのニトリル手袋
パウダーありのニトリル手袋は、手袋の内側にトウモロコシデンプンの粉を施して装着をスムーズにしたものです。
粉によって滑りが良くなるため、頻繁に手袋を着脱する必要がある場面でも使いやすくなっています。ただし、人によってはトウモロコシデンプンの粉が原因で皮膚トラブルを起こす可能性があります。
パウダーなしのニトリル手袋
パウダーを使わないニトリル手袋は、手袋の内側にトウモロコシデンプンの粉の代わりに塩素処理やポリマー加工などを施してあります。パウダーありの手袋と同様にスムーズな着脱が可能で、感触もほとんど変わりません。パウダーを使っていないため、トウモロコシデンプンによるアレルギーの心配がない点が大きな特徴です。
厚生労働省では、2016年からパウダーありの使い捨て手袋のリスクを考慮し、パウダーフリーの手袋を推奨するようになりました。ハッピーハンズでは、2016年のこの発表以降、パウダーなしの手袋のみを販売しています。
介護現場でニトリル手袋が多く使われる理由

介護現場では、ポリ塩化ビニル手袋・プラスチック手袋・ラテックス手袋・ニトリル手袋などが使われていますが、その中でもニトリル手袋は多くの介護のシーンで用いられています。ニトリル手袋が頻繁に使われる理由には、次のような点があげられます。
耐久性が高い
ニトリル手袋は耐久性が高いため、長時間の使用や摩擦にも強いです。介護現場では、重たいものを持ち運んだり、利用者の体を支えたりすることも少なくありません。耐久性のない手袋を使った場合、すぐ破れたり破損したりして取り替える手間が増えてしまいます。
また、破れや穴あきの部分から、細菌が入り込んで感染症が広まるリスクも高まります。耐久性に優れたニトリル手袋なら、体力を必要とする介護現場での作業にも耐えられるため安心です。
伸縮性に優れている
ニトリル手袋は薄くてもよく伸びて柔らかく、手や指先に密着します。そのため、感染症対策や衛生管理を行いながら、細かい作業をするときにも最適です。
指先の感覚を残したい作業でも、手袋をしていないときと同じような可動域を保てるでしょう。
耐油性がある
ニトリル手袋には、耐油性もあります。そのため、介護現場でも利用者のための食事の支度や介助など、油に触れる機会があるため、ニトリル手袋を使えば安心して作業ができるでしょう。
耐薬品性がある
ニトリル手袋は、薬品にも強いという特徴があります。そのため、薬剤を用いた検査や診療を行う医療現場でもよく使われています。
介護現場でも衛生管理や利用者の介助などで、薬品を使う場面も少なくありません。また、消毒や清掃の際に強力な洗剤を使うときもニトリル手袋なら耐えられるため、介護業界にも適した使い捨て手袋といえます。
介護用のニトリル手袋を選ぶときのポイント

介護用のニトリル手袋を選ぶ際のポイントをお伝えします。介護の現場では、コストを重視して安い手袋を選んでしまいがちですが、感染症対策や衛生管理など使い捨て手袋の本来の目的を考えた場合、確かな品質で使いやすいものを選ぶべきです。
ニトリル手袋の特徴を理解したうえで、サイズや使いやすさなどを比較して選ぶとよいでしょう。
サイズ
安全に利用者を介護するためにも、自分の手に合うサイズのニトリル手袋を選びましょう。サイズが大きいと脱げやすくなり、手が滑ってしまい作業に支障をきたすこともあります。また、自分の手よりもサイズが小さいと着脱がしにくく、破けてしまう可能性もあります。
ニトリル手袋のサイズは、XS、S、M、Lなど幅広く展開されているため、自分の手にぴったり合う手袋が選べるでしょう。
また、ニトリル手袋やそのほかの使い捨て手袋には、サイズの表記以外にも「全長」「手の甲(手の平)」「中指の長さ」が明記されています。より手に合うものを選ぶためにも、購入前に自分の手の大きさを測って、一番近いサイズを購入するとよいでしょう。
また、介護の作業によって適した厚みを選ぶことも可能です。ハッピーハンズのカタログでは、Mサイズを基準にした1枚の厚さから手袋の厚みを「厚手」「レギュラータイプ」「薄手」の3段階に分けています。また、カタログには、指先の厚さも数値で記載しております。
厚みを実際に確認したい場合は、サンプルがおすすめです。ハッピーハンズでは、すべての手袋のサンプルを用意いたしております。お気軽にお問合せください。
着脱のしやすさ
介護現場で使い捨て手袋を使う目的は、衛生管理と感染症対策です。そのため、再利用は厳禁で、作業ごとや接する利用者ごとにニトリル手袋を交換します。着脱しやすいかどうかは、ニトリル手袋選びの大きなポイントといえるでしょう。
パウダーつきのニトリル手袋は、滑りがよく着脱しやすいですが、手袋を外すときに粉が手や衣服に付着して肌トラブルが起こるリスクがあります。
パウダーなしでも着脱しやすいニトリル手袋なら、肌トラブルの心配なく着脱もスムーズに行えます。ハッピーハンズのニトリル手袋は、すべてパウダーなしです。
低刺激性か
介護現場での業務に当たるときは、長時間使い捨て手袋を付けていることも少なくありません。そのため、肌に優しく安心して使える手袋を選びましょう。ニトリル手袋なら、ラテックスアレルギーの心配はありません。
ただし、ニトリル手袋を製造する過程で加硫促進剤という化学物質が使われているものがあり、この加硫促進剤によってアレルギー性皮膚炎を起こすことがあります。
肌が弱い方や以前ニトリル手袋を使って肌に異変を感じた方は、加硫促進剤が使用されていないニトリル手袋の方が安心でしょう。ハッピーハンズでは、加硫促進剤不使用の手袋も販売しております。
色
ニトリル手袋には、白以外にも青色や黒色などがあります。使用する現場や目的に合わせて色を選びましょう。白はシンプルな色で多くの使い捨て手袋にも使われている色です。清潔なイメージがあるため、医療業界や製造業、食品加工など幅広い現場で使われています。
青色の手袋には、異物を見分けやすくする特徴があるため、手術や食品加工の現場などでよく使われる色です。また、黒いニトリル手袋は落ち着いた雰囲気があり、汚れが目立ちにくい、周囲へ清潔感を印象付けやすいなどの特徴があるといわれています。
そのため、黒も医療現場や飲食店などでよく利用される色です。また、美容院やTATTOO業界でも黒を主流で使う傾向があります。
ニトリル手袋の正しい使い方

ニトリル手袋の正しい使い方を紹介します。感染症対策や衛生管理をしっかり行うためにも、次の手順で着脱するようにしてください。
ニトリル手袋を付けるとき
- 最初に手洗いと消毒を行う
- 手袋の手首の部分をつかんで片方の手にはめる
- 反対の手も同じようにして手袋をはめる
ニトリル手袋を外すとき
- 片方の手袋の袖口をつかんで手袋が裏表逆さになるようにして外す
- 外した手袋をもう片方の手で握る
- 手袋を外した方の手の指を反対の手袋の袖口に差し込んで裏表逆さになるようにして手袋を外す
- 手袋を捨てて手洗いと消毒を行う
手袋を付けるときは、新品であっても穴あきや破損がないか確認してから装着してください。また、短時間でも使った手袋は、汚染されていると考えましょう。捨てた後は、触れないようにして、すぐに手洗いと消毒を行ってください。
介護現場で使うならニトリル手袋が最適

介護現場では、介護者と要介護者を感染から守り衛生管理を行うためにも、さまざまな場面で手袋を着用します。介護現場に適した使い捨て手袋には、ポリ塩化ビニル手袋やプラスチック手袋、ラテックス手袋、ニトリル手袋などがありますが、コストだけを重視して選ぶのは良くありません。
耐久性や伸縮性に優れていて使いやすく、ラテックスアレルギーの心配がないニトリル手袋は介護業界でも多く使用されています。
ニトリル手袋でもパウダーや加硫促進剤による肌トラブルが心配な場合は、パウダーなしや加硫促進剤不使用の手袋を選びましょう。ぜひ今回の記事を読んでいただき、適切な手袋選びの参考にされてください。