病院や歯科医院での作業には、医療従事者や患者さんの感染や汚染のリスクを低減するために使い捨て手袋が欠かせません。使い捨て手袋を選ぶ際には、安全性だけではなく作業のしやすさや、手袋に接触することで起こるラテックスアレルギーを抑えられる種類の手袋を選ぶことが重要です。
ニトリル手袋はラテックスアレルギーの起きない手袋として多くの医科歯科で利用されていますが、近年、ニトリル手袋でも手の痒みや乾燥などの手荒れが起こる可能性があることが指摘されています。
本記事では、ニトリル手袋に使われている加硫促進剤(アクセラレーター)についてや、安全に使えるニトリル手袋を選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。

著者紹介
歯科医院・病院用衛生用品を1つから購入できる通販サイト「HAPPY HANDS(ハッピーハンズ)」です。歯科医院などで使用される使い捨て手袋やマスク、その他の衛生用品をさまざま販売しています。
今回は、使い捨てゴム手袋に使用されている加硫促進剤について解説します。手肌悩みを持つ方が知っておくべき内容なので、ぜひ参考にされてください。
医科歯科で使われている使い捨て手袋の種類

病院や歯科医院では、安全面と使いやすさなどを考えて、使い捨てのゴム手袋が多く使われています。今回は使い捨てゴム手袋の中からラテックス手袋とニトリル手袋の2種類について紹介します。
ラテックス手袋
ラテックス手袋は、天然ゴムのラテックスを原料とした手袋です。ラテックスは、ゴムの木から取れる乳液や界面活性剤で乳化させたモノマーを重合して得られる液体をいいます。
ゴムのコロイド状水分散物で、この樹液は3日に1度しか取れない貴重なもので、1回の樹液採取からはラテックス手袋2枚の量しか作れません。
ラテックス手袋の特徴
ラテックス手袋は、耐久性と伸縮性に優れています。手にぴったりと密着するので、疲れを軽減しながら手や指の感覚は素手のように動かせるため、医療現場にも適している手袋です。
ただし、油や薬品への耐性はあまり高くはありません。また、天然ゴムが原料になっているため、ラテックスアレルギーを引き起こすリスクがあります。ラテックスアレルギーとは、天然ゴムに含まれるたんぱく質に対する反応で、天然ゴムのラテックスが皮膚や粘膜に付着した際にかゆみや赤み、蕁麻疹などの症状が出ます。
重症の場合は、アナフィラキシーショックが起こることもあり注意が必要です。必ず専門医に相談をしてください。
ラテックスアレルギーの人は、特定の果物によってもアレルギー反応が出ることがあります。これは、ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれるもので、いくつかの果物に含まれるたんぱく質とラテックスに含まれるたんぱく質が似ているために、体の免疫系が果物をラテックスと判断してアレルギー反応を起こすことです。
アボカド・キウイフルーツ・バナナ・クリなどのたんぱく質に反応するとされているので、ラテックスアレルギーの人はこれらの果物を食べるのは避けてください。
ラテックス手袋の種類
ラテックス手袋は、2つの加工法によって作られています。手袋の内側をポリマー溶液に浸してポリマー層でコーティング処理して作られたものと、手袋を塩素液に浸して塩素処理して作ったものです。
ポリマーコーティングの手袋はしっとりした感触が特徴で、塩素処理した手袋は、乾いた感触、さらに着脱がしやすい点が特徴です。
ニトリル手袋
ニトリル手袋も医療現場でよく使われるゴム手袋です。ラテックス手袋は天然ゴムが原料ですが、ニトリル手袋はニトリルゴム(NBR:Nitrile Butadiene Rubber)という合成ゴムや人工ゴムを原料にしています。
ニトリルゴムとは、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合によって合成された化学合成ポリマーです。
ニトリル手袋の特徴
ニトリル手袋もラテックス手袋と同様に、耐久性や伸縮性に優れています。また、薬品や油、洗剤に強いのが大きな特徴です。さらに耐突刺性が高い点も、多くの医療現場で採用される理由の1つといえるでしょう。
病院や歯科医院では、先端が細く尖った器具や注射針などを日常的に使います。耐突刺性の低い手袋では、ちょっとした刺激で穴あきや破れが生じ、感染のリスクが高まってしまいます。耐突刺性のあるニトリル手袋は、医科歯科に適した手袋といえるでしょう。
ニトリル手袋の種類
ラテックス手袋同様にニトリル手袋にも、パウダーありとパウダーなしの2種類があり、パウダーありの手袋には”トウモロコシデンプン”の粉が付けてあります。これは、手袋の装着をスムーズに行える上に汗を抑えるために施されているものです。
パウダーなしの手袋は、手袋の内側に塩素処理やポリマー加工が施されており、これによりパウダーありの手袋と同様、スムーズに装着できます。パウダーありの手袋の注意点について後ほどご紹介します。
ニトリル手袋が医科歯科で多く使われる理由

ラテックス手袋もニトリル手袋も医科歯科に適した手袋といえますが、ニトリル手袋の方を採用しているところは少なくありません。
耐久性や伸縮性は、ラテックス手袋もニトリル手袋も同じようにあります。しかし、ニトリル手袋の方が、耐薬品性や耐突刺性があるため、薬品や先端の鋭い器具などを頻繁に扱う医療現場に適していると判断されるためでしょう。
また、ラテックスアレルギーの心配がない点も、ニトリル手袋が選ばれる大きな理由です。医療従事者は日頃からゴム手袋を使用する機会が多いため、ラテックスアレルギーになりやすい傾向があります。
ラテックスアレルギーは、1度使って反応が出る場合だけではなく、何度も使用して問題なくても蓄積されて反応するようになるケースも少なくありません。一旦、ラテックスアレルギーになってしまうと、天然ゴムに触れるたびに反応してしまうのでラテックス手袋は使えなくなってしまいます。
医療従事者だけではなく、ラテックスアレルギーの患者さんを守るためにもニトリル手袋を使っている医科歯科は多くあります。
ニトリル手袋で手の痒みやアレルギーが起こることも

今までは、「ニトリル手袋ならアレルギーの心配がない」とされてきましたが、実はニトリル手袋でもアレルギーや肌トラブルが起こる可能性があることがわかってきました。
ニトリル手袋のアレルギーの原因の1つといわれているのが、加硫促進剤(アクセラレーター)です。加硫促進剤とは、手袋の伸縮性を維持するために使われる成分で、化学反応を利用して効率的にニトリル手袋を生産しています。
ニトリル手袋は、ほかの手袋と比較すると少し硬さがあります。手の疲れを低減し、手指をより自由に動かせるようにするためにも、ニトリル手袋をより柔らかくするために加硫促進剤が使用されているものがあるのです。
加硫促進剤に反応すると、手荒れなどの皮膚過敏症やアレルギー性接触皮膚炎、刺激性皮膚炎などの症状が出ることがあります。原因は加硫促進剤そのものに対するアレルギー反応や使い捨て手袋に使われている化学物質の組みあせわによって反応する場合などが考えられます。
また、刺激性皮膚炎に関しては、皮膚に触れた物質の毒性や働きが原因で起こり、免疫系が反応を起こすことで赤みや痒みなどの症状が発生します。
加硫促進剤以外のアレルギーの原因になりうる成分

ニトリル手袋の加硫促進剤以外に使われている成分が、アレルギーや肌荒れの原因になる可能性もあります。
可塑剤(かそざい)
可塑剤はプラスチックを柔らかくし、加工しやすくするために使われるもので、酸とアルコールで合成される物質です。ポリ塩化ビニル製品などにもよく使われています。
使い捨てのゴム手袋にも可塑剤が使われていることがあり、可塑剤が原因で接触アレルギー性皮膚炎 (IV 型)が起こる場合があります。ニトリル手袋を使って手がかゆくなるという場合は、この可塑剤による可能性もあるかもしれません。
熱安定剤
ニトリル手袋だけではなく、使い捨て手袋に多く使われているのが熱安定剤です。熱安定剤とは、高温でも耐えられるよう製品を加工するために使われるもので、酸化防止剤の一種です。熱安定剤を使うと、製品の耐熱性や性能を高められます。
ニトリル手袋の熱安定剤によって、手湿疹が出る場合があります。手湿疹は、手のひらや手の甲、指などに水ぶくれや赤み、かゆみ、ひび割れなどの症状が出るものです。手湿疹ができてしまうと、手袋をつけることでさらに悪化する場合もあるため、なるべく手湿疹の原因になるような成分が入っているものを使わないようにしましょう。
トウモロコシデンプン
パウダー付きのニトリル手袋の内側に使われるトウモロコシデンプンの粉は、手袋の着脱をスムーズにしたり、手袋を装着している間の汗を抑えて使用感を良くしたりするために使われているものです。
一般的にパウダー付きやパウダーフリーなどと表記されていますが、トウモロコシデンプンが肌に付着することで、かゆみや乾燥などの症状が出る場合があります。
2016年、厚生労働省では、このトウモロコシデンプンのパウダー付きの使い捨て手袋は人体に有害であるとし、パウダーフリーの手袋を推奨するようになりました。ハッピーハンズでは、2016年のこの発表以降、パウダーなしの手袋のみを販売しています。
ニトリル手袋でアレルギーの症状が出た場合の対処法

ニトリル手袋を選べば、アレルギーは起きないというわけではありません。特に医療従事者は、作業で手袋をする機会が一般の人よりも多いため、アレルギー物質が体内に蓄積しやすく、アレルギーも起こりやすいことを理解しておきましょう。
ニトリル手袋で、かゆみや乾燥、湿疹などの反応が出たら、まずはその手袋の使用を中止しましょう。基本的な対処法としては、手指をよく洗い、消毒をして様子を見てください。手袋が使えないと仕事に支障をきたすため、なるべく早く医療機関を受診して診断を受けましょう。その際には、使用していたニトリル手袋や、製品情報がわかるようメモを持参するとよいでしょう。
今までは問題なく使えていても、翌日からアレルギー反応が出てしまう場合もあります。また、アレルギー性接触皮膚炎は、アレルゲンに一度触れるだけで症状が出る場合と何度か接触することで発症する場合があります。重症化するとアナフィラキシーショックや気管支喘息を起こすこともあるため注意が必要です。
安全に使えるニトリル手袋を選ぶポイント

病院や歯科医院では、使い捨て手袋は欠かせません。今までは、ラテックス手袋よりもニトリル手袋の方がアレルギーのリスクはないと考えられてきましたが、ニトリル手袋でも使われる成分によって皮膚の痒みやアレルギーなどが起きることがわかってきました。
日常の業務で必要とする手袋を安心して使えるよう、ニトリル手袋を選ぶときにチェックしたいポイントを紹介します。
加硫促進剤不使用(アクセラレーターフリー)のもの
加硫促進剤が使われていないニトリル手袋を選びましょう。アクセラレーターに反応すると、手荒れや皮膚過敏症などの症状が出る場合があります。
加硫促進剤不使用(アクセラレーターフリー)と書かれているニトリル手袋なら安心です。だたし、加硫促進剤不使用は、一般的なニトリル手袋と比較すると価格が高くなる傾向があります。
医療従事者全員が使う手袋を、加硫促進剤不使用のニトリル手袋にするとコストが高くなってしまうため、アレルギーを持つ人向けとニトリル手袋を使用してもアレルギーが出ない人向けのものを使い分けるとよいでしょう。
パウダーフリーのもの
厚生労働省からも指摘があるように、トウモロコシデンプンのパウダー付きニトリル手袋を使うと、アレルギーや肌トラブルが起こる可能性が高くなります。パウダーフリーのニトリル手袋にした方が安心です。
2016年の厚生労働省の発表後は、パウダーフリーのニトリル手袋を取り扱うところも増えました。必ず、製品を注文する前に、パウダー付きかパウダーフリーかを確認しましょう。
手袋を装着した感じや実際に肌に触れた様子をチェックしたい場合は、サンプルを取り寄せるとよいでしょう。ハッピーハンズでは、すべての手袋のサンプルをご用意しております。お気軽にお問い合わせください。
医科歯科におすすめのニトリル手袋
医療現場で使いやすいおすすめのニトリル手袋を紹介します。アレルギー対策を重視して手袋を選ぶ場合は、ぜひ使ってみてください。
ニトリルプロ・プラス【加硫促進剤不使用】

加硫促進剤不使用の人工ラテックスを原料としたニトリル手袋です。
パウダーフリーなので、加硫促進剤だけではなくトウモロコシデンプンも使っていません。しかし、一重塩素加工を施してあるため、パウダー付きとほぼ変わらずスムーズな着脱が可能です。
サイズはXS・S・M・Lと細かく分かれているので、自分の手のサイズに合うものを選べるでしょう。
指先から手首までの手袋の長さは24cmです。まとめ買いがお得ですが、サンプルも用意しておりますので、まずは試してみてください。
ニトリル手袋でアレルギーが起こることもある!加硫促進剤不使用のものが安心

今までは、「ニトリル手袋は、アレルギーの心配がない」といわれ、多くの病院や歯科医院などでニトリル手袋が使われてきました。
確かに、天然ゴムではなく人工ゴムが原料のため、ニトリル手袋はラテックスアレルギーの心配はありません。しかし、手袋の使い心地を柔らかくするために使われている加硫促進剤や、着脱をスムーズにするためのトウモロコシデンプンが原因でアレルギー反応が出る可能性はあります。
特に医療従事者は、ゴム手袋を頻繁に使う機会が多いため、アレルギー症状が出やすいことを認識しておきましょう。
アレルギー対策を重視して手袋を選ぶなら、加硫促進剤不使用、パウダーフリーのものがおすすめです。サンプルもあるので、実際に一度使ってみてから購入を決めるとよいでしょう。