予防接種用手袋の基礎知識|医療現場で求められる手袋の条件とは?

予防接種用手袋の基礎知識|医療現場で求められる手袋の条件とは?

予防接種や検診などを行う際は、手袋を着用するのが一般的です。医療現場では、常に感染や汚染のリスクにさらされているため、作業内容や目的に合わせて適した手袋を選ぶ必要があります。

本記事では、予防接種用の手袋に求められる機能や予防接種に適した使い捨て手袋について詳しく解説します。また、予防接種のときの正しい手袋の着脱方法についても紹介しているので参考にしてください。

予防接種で手袋は必要?

インフルエンザやみずぼうそう、日本脳炎、肺炎球菌など、病気への免疫をつけるための予防接種はさまざまあります。予防接種は、子どものときに接種するものばかりではなく、大人が打つべきものや高齢者が打った方がよいものもあり、医療現場では通常の診察や検査と合わせて日常的に行うものです。

一般的に予防接種をする際は、手袋の着用は義務付けられていません。特に筋肉注射を行う場合は、毎回手指の消毒を行えば手袋はなしで構わないとされています。

しかし、接種者の手に傷がある場合や、何らかの感染性物質に手が触れる可能性がある場合は、予防接種でも手袋の着用が推奨されているため多くの医療現場では手袋を着用して予防接種を行うケースが多いようです。

予防接種で手袋を着用する意味

前述したように予防接種では、手袋の着用は義務ではありませんが、現場では細菌感染のリスクを下げるために手袋を着用して対応する医療従事者の人が多くいます。

手袋を装着することで、医療従事者が感染するリスクを減らせるだけではなく、予防接種を行う人の消毒した手から剥がれ落ちてくる皮膚や細菌、そのほかの物質が周囲に拡散するのを防げるからです。

ここで問題になるのが、予防接種の際の手袋の使い回しです。本来は、予防接種で手袋を着用する場合は、手指の消毒を行ってから手袋を装着し被接種者ごとに交換しなければいけません。

しかし、患者さんが多く院内が混雑していたり、集団予防接種会場で次々に予防接種をしなければいけない状況だったりすると、手袋を毎回交換せずに手袋の上から手指を消毒して次の人に予防接種を行っているケースも少なくありません。

手袋の上からアルコール消毒をすると、アルコールによって手袋が破損する可能性があるため逆効果です。予防接種で手袋を使う場合は、手袋の効果を最大限に活かすためにも毎回交換し、手指の消毒も行う必要があります。

予防接種用手袋に必要な機能

予防接種用の手袋に必要な機能は、以下になります。

  • 耐久性
  • 伸縮性
  • 耐突刺性
  • 耐薬品性

耐久性

予防接種をするときの手袋は、耐久性に優れているものがよいでしょう。薬品を調合したり、注射針を扱ったりするため、破れやすい手袋ではちょっとした衝撃で穴あきや破損する可能性があります。

予防接種で破損した手袋を使っていると、医療従事者の感染リスクが高まるだけではなく被接種者も感染や汚染するリスクが出てきます。

また、耐久性の低い手袋の場合、毎回手袋を取り替える際に破けてしまうこともあるため、作業に時間がかかってしまい非効率的になることも考えられるでしょう。安全に速やかに予防接種を行うためにも、耐久性のある手袋が望ましいです。

伸縮性

伸縮性のある手袋が、予防接種には適しています。使い捨て手袋の種類はさまざまありますが、手に密着しないタイプの手袋は、薬品や注射針を扱う予防接種には使えません。

しっかりと手指に密着し、指先を素手のように自由に動かせる手袋がよいでしょう。伸縮性があるうえに、手指の感覚がはっきりとわかるようなものが適しています。

耐突刺性

予防接種用の手袋は、耐突刺性があるものがおすすめです。予防接種では、毎回注射針を扱います。そのため、針の先端が手袋に触れたり引っかかったりすることも少なくありません。

耐突刺性のない手袋では、尖った医療機器が少し触れただけで穴が空いたり破けてしまう可能性があり危険です。また、傷のついた手袋は使えないため、破損するたびに取り替えなければいけません。作業をスムーズに行うためにも、耐突刺性のある手袋を選ぶ方がよいでしょう。

耐薬品性

予防接種用の手袋に、耐薬品性があるかどうかも重要なポイントです。予防接種では、薬剤を調合したり、注射器に薬品を入れたりするなど、常に薬品を取り扱います。

予防接種の方が医療現場での検査や診察などの作業のときよりも、頻繁に薬品に触れる機会が多いため、耐薬品性のある手袋を使う方が安心です。耐薬品性の高い手袋であれば、予防接種はもちろん、医療機器の洗浄を行うときなどにも使えるため便利です。

予防接種の手袋はいつからつければいい?

予防接種では、医療従事者も被接種者も感染のリスクから守るために手袋をした方がよいでしょう。しかし、どのタイミングで手袋をつければいいのか迷う人もいるかもしれません。

予防接種の手順は、一般的に受付をしてから予防接種が可能かどうかを判断するために予診を行います。次に、薬液の調整や充填など予防接種を行うための準備に取り掛かり、予防接種をします。

ワクチンの種類にもよりますが、接種後は院内や接種会場で一定期間観察を行うこともあり、問題なければ帰宅という流れです。

手袋を着用するタイミングは、薬液の調整の際に着用し、その後予防接種をするごとに取り替えるとよいでしょう。調剤業務では、個々の被接種者に触れることがないため、1つの手袋を使い続けても問題ありません。

予防接種に適した手袋とは

予防接種に使う手袋は、使い捨てのゴム手袋がおすすめです。耐久性、伸縮性に優れているため、注射針を扱って細かい作業を行う予防接種に最適です。使い捨てゴム手袋は複数ありますが、その中からラテックス手袋とニトリル手袋の2種類を紹介します。

ラテックス手袋

天然ゴムのラテックスを使って作られているのがラテックス手袋です。ラテックスは、ゴムの木から取れる乳液や界面活性剤で乳化させたモノマーを重合して得られる液体のことで、ゴムのコロイド状水分散物です。

ラテックスの樹液は貴重なもので、3日に1度しか取れないうえに、1本のゴムの木から取れる樹液の量でラテックス手袋は2枚しか作れません。

ラテックス手袋は、油や薬品への耐性はあまり高くはないものの、耐久性と伸縮性に優れているため、医療用として広く使われています。手にぴったりと密着し、疲れを軽減しながら手指を自由に動かせるので、予防接種のときにも適しているといえるでしょう。

ラテックス手袋の製法

ラテックス手袋には、異なる2つの加工法があります。手袋を塩素液に浸して塩素処理して作ったものと、手袋の内側をポリマー溶液に浸してポリマー層でコーティング処理して作られたものです。

塩素処理したラテックス手袋は、乾いた感触が特徴で着脱がしやすくなっています。また、ポリマーコーティングのラテックス手袋は、しっとりした感触です。

ラテックスアレルギーには注意

ラテックス手袋は予防接種に適していますが、天然ゴムのラテックスによるラテックスアレルギーがあることには注意が必要です。

ラテックスアレルギーとは、天然ゴムに含まれるたんぱく質に対して起こるもので、天然ゴムのラテックスが皮膚や粘膜に付着した際に、人の体内で抗体を作ろうとしてかゆみや赤みなどさまざまな症状が出るものです。

直接ラテックスのたんぱく質が皮膚に付かなくても、汗や水分などで製品からゴムの成分が溶け出したものが皮膚や粘膜についてしまい、反応が起こるケースもあります。

また、装着しやすくするために手袋の内側にパウダーを施したラテックス手袋は、内側に施されたパウダーに天然ゴムやそのほかのラテックスアレルゲンが吸着し、そのパウダーをゴム手袋着脱の際に吸引して反応が出てしまう場合もあります。

さらに、ラテックスアレルギーの人は、特定の果物にも注意しなければいけません。ラテックス・フルーツ症候群というもので、いくつかの果物に含まれるたんぱく質とラテックスに含まれるたんぱく質が似ているために、体の免疫系が果物をラテックスと判断してラテックスアレルギー反応が起こるものです。ラテックスアレルギーの人は、アボカド・キウイフルーツ・バナナ・クリなどは食べないようにすべきです。

医療従事者は、業務中は頻繁にゴム手袋を取り替えながら使います。そのため、ラテックスアレルギーになりやすい傾向があることを理解しておきましょう。また、予防接種の際は、被接触者がラテックスアレルギーである可能性もあるため配慮が必要です。

ニトリル手袋

ニトリル手袋もゴム手袋の一種で、医療現場でよく使われるものです。ラテックス手袋との違いは原料で、ラテックス手袋が天然ゴムを使っているのに対して、ニトリル手袋はニトリルゴム(NBR:Nitrile Butadiene Rubber)という合成ゴムや人工ゴムを原料としています。

ニトリルゴムは化学合成ポリマーで、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合によって合成されたものです。ニトリル手袋も耐久性や伸縮性が高く、さらに薬品や油、洗剤にも強い点が大きな特徴です。薬品を調合し予防接種をする際に適した手袋といえるでしょう。

粉あり・粉なしがある

ラテックス手袋にもパウダー付き・パウダーなしがありますが、ニトリル手袋にもパウダー付きとパウダーフリーのものがあります。パウダー付きのゴム手袋には、着脱しやすくするために手袋の内側にトウモロコシから作られたデンプンの粉が施されています。

パウダー付きのニトリル手袋は、毎回手袋を変えなければいけない予防接種用に適しているように思われますが、このトウモロコシデンプンのパウダーによってかゆみや皮膚の乾燥などの反応が起こることがあります。

厚生労働省では、パウダー付きの使い捨て手袋は人体に有害であるとし、2016年からパウダーフリーの手袋を推奨するようになりました。ハッピーハンズでは、厚生労働省の発表以降、パウダーなしの手袋のみを販売しています。

パウダーフリーのニトリル手袋は、手袋の内側にトウモロコシデンプンの粉の代わりに塩素処理やポリマー加工などを施して着脱しやすくした手袋です。パウダー付きと装着する際の感触はほぼ変わらないうえに、パウダーによる皮膚の痒みなどの心配もないのでパウダーフリーのニトリル手袋を選ぶとよいでしょう。

ただし、加硫促進剤という化学物質が含まれている場合があり、この成分が刺激となってアレルギー性皮膚炎を引き起こす可能性も少なからずあります。そのため、「加硫促進剤」に対してアレルギー反応が出た方は、「加硫促進剤不使用」と書かれたニトリル手袋を選ぶのがおすすめです。ハッピーハンズでは、加硫促進剤不使用のグローブも販売しています。

予防接種用手袋にニトリル手袋がおすすめの理由

予防接種用の手袋は、ラテックス手袋よりニトリル手袋の方がおすすめです。その理由を見ていきましょう。

耐久性が高い

ニトリル手袋は耐久性が高いため、頻繁に手袋を取り替えながら作業を行う予防接種に適しています。予防接種では、被接種者の注射する部位を事前に消毒します。耐久性のあるニトリル手袋なら、アルコールが多少手袋に破損することはありません。

手術などの長時間の作業で使われることも多いため、予防接種用としても問題なく使えるでしょう。

耐薬品性がある

ニトリル手袋は、ラテックス手袋に比べて耐薬品性が高くなっています。予防接種ではワクチンや薬剤を調合し、注射器に入れる作業もあるため、耐薬品性の高い手袋を使う方が安心です。

耐突刺性がある

予防接種用手袋に必要な機能に、耐突刺性があります。注射針を毎回取り扱うため、耐突刺性のない手袋を使っていると、頻繁に穴あきや破損が起こり手袋を取り替えなければいけません。

感染や汚染のリスクも高まるので、予防接種用の手袋は耐突刺性に優れたものを選ぶべきでしょう。ニトリル手袋なら、安心して作業ができます。

ラテックスアレルギーの心配がない

ニトリル手袋なら、合成ゴムや人工ゴムを原料としているため、ラテックスアレルギーの心配がありません。集団で予防接種を行う現場では、被接種者の中にラテックスアレルギーの人がいるかを確認するのは難しいため、ラテックスアレルギーの心配がない手袋を使うべきです。

ニトリル手袋は、ラテックスアレルギーを持つ医療従事者や患者さんにも使えるので、予防接種用に適しています。

予防接種用手袋の正しい着脱方法

予防接種用の手袋の正しい着脱方法を、見ていきましょう。

よく理解している人でも、多くの数をこなさなければいけない予防接種の場では、正しい着脱方法ができていない場合もあります。

安全な作業を行うためにも、もう一度確認してみてください。

手袋を付けるとき

  1. 最初に手洗いと消毒をする
  2. 手袋の手首の部分を掴んで片方の手にはめる
  3. 反対の手も同じようにして手袋をはめる

手袋を外すとき

  1. 片方の手袋の袖口を掴んで手袋を裏表逆さになるようにして外す
  2. 外した手袋をもう片方の手で持つ
  3. 手袋を外した方の手の指を反対の手袋の袖口に差し込んで同じように裏表逆さになるように手袋を外す
  4. 手袋を捨てたら手洗いと消毒をする

予防接種に手袋は必須|安全性の高いものを選び正しく着用を

予防接種をする際には、筋肉注射では手袋は必要ないとされていますが、被接種者と触れることもあるため、感染と汚染予防のためにも手袋をした方が安心でしょう。

予防接種用の手袋は、耐久性、伸縮性に優れているだけではなく、耐薬品性や耐突刺性のあるものが適しています。

また、手袋によるラテックスアレルギーから医療従事者や被接種者を守るために、ラテックスフリーでパウダーフリーのものがおすすめです。毎回、手袋を交換する必要がありますが、着脱方法は正しく行いましょう。

グローブの商品一覧はこちら

【グローブの商品一覧】をご確認いただく方へ

グローブ商品一覧の上部にて「ラテックス」「ニトリル」など商品を絞って調べられるリンクがありますので、ぜひご活用ください。

また、サイト内ではグローブの1ページ目の写真にて素材の記載があります。写真左上に四角いアイコンで「ラテックス(紫のアイコン)」「ニトリル(グリーンのアイコン)」と表記しておりますのでご参考になさってください。