病院や歯科医院では、安全面と使いやすさなどを考えて、使い捨てのゴム手袋が多く使われています。今回は使い捨てゴム手袋の中からラテックス手袋とニトリル手袋の2種類について紹介します。
ラテックス手袋
ラテックス手袋は、天然ゴムのラテックスを原料とした手袋です。ラテックスは、ゴムの木から取れる乳液や界面活性剤で乳化させたモノマーを重合して得られる液体をいいます。
ゴムのコロイド状水分散物で、この樹液は3日に1度しか取れない貴重なもので、1回の樹液採取からはラテックス手袋2枚の量しか作れません。
ラテックス手袋の特徴
ラテックス手袋は、耐久性と伸縮性に優れています。手にぴったりと密着するので、疲れを軽減しながら手や指の感覚は素手のように動かせるため、医療現場にも適している手袋です。
ただし、油や薬品への耐性はあまり高くはありません。また、天然ゴムが原料になっているため、ラテックスアレルギーを引き起こすリスクがあります。ラテックスアレルギーとは、天然ゴムに含まれるたんぱく質に対する反応で、天然ゴムのラテックスが皮膚や粘膜に付着した際にかゆみや赤み、蕁麻疹などの症状が出ます。
重症の場合は、アナフィラキシーショックが起こることもあり注意が必要です。必ず専門医に相談をしてください。
ラテックスアレルギーの人は、特定の果物によってもアレルギー反応が出ることがあります。これは、ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれるもので、いくつかの果物に含まれるたんぱく質とラテックスに含まれるたんぱく質が似ているために、体の免疫系が果物をラテックスと判断してアレルギー反応を起こすことです。
アボカド・キウイフルーツ・バナナ・クリなどのたんぱく質に反応するとされているので、ラテックスアレルギーの人はこれらの果物を食べるのは避けてください。
ラテックス手袋の種類
ラテックス手袋は、2つの加工法によって作られています。手袋の内側をポリマー溶液に浸してポリマー層でコーティング処理して作られたものと、手袋を塩素液に浸して塩素処理して作ったものです。
ポリマーコーティングの手袋はしっとりした感触が特徴で、塩素処理した手袋は、乾いた感触、さらに着脱がしやすい点が特徴です。
ニトリル手袋
ニトリル手袋も医療現場でよく使われるゴム手袋です。ラテックス手袋は天然ゴムが原料ですが、ニトリル手袋はニトリルゴム(NBR:Nitrile Butadiene Rubber)という合成ゴムや人工ゴムを原料にしています。
ニトリルゴムとは、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合によって合成された化学合成ポリマーです。
ニトリル手袋の特徴
ニトリル手袋もラテックス手袋と同様に、耐久性や伸縮性に優れています。また、薬品や油、洗剤に強いのが大きな特徴です。さらに耐突刺性が高い点も、多くの医療現場で採用される理由の1つといえるでしょう。
病院や歯科医院では、先端が細く尖った器具や注射針などを日常的に使います。耐突刺性の低い手袋では、ちょっとした刺激で穴あきや破れが生じ、感染のリスクが高まってしまいます。耐突刺性のあるニトリル手袋は、医科歯科に適した手袋といえるでしょう。
ニトリル手袋の種類
ラテックス手袋同様にニトリル手袋にも、パウダーありとパウダーなしの2種類があり、パウダーありの手袋には”トウモロコシデンプン”の粉が付けてあります。これは、手袋の装着をスムーズに行える上に汗を抑えるために施されているものです。
パウダーなしの手袋は、手袋の内側に塩素処理やポリマー加工が施されており、これによりパウダーありの手袋と同様、スムーズに装着できます。パウダーありの手袋の注意点について後ほどご紹介します。